共通テストのリスニングが難しいと感じる受験生は多い。そして、その原因の大半は単語力ではない。英語が、書いてある通りには発音されないからだ。
私は高2の秋の進研模試で英語偏差値39だった。そこから『ハイパートレーニング』という長文問題集の音読を1日1〜3時間、2カ月続けて62まで上げ、浪人した年は河合塾の長文テキストをコツコツ音読し続けて、夏の全統記述模試で70.5になった。音読で英語の成績は大きく変わった。ただ、リスニングだけは対策らしい対策をしておらず、リーディングより点数が低く出る傾向がずっと残っていた。
転機は、大学院試験のために受け直したTOEICだった。3年近く英語から離れたあとの2カ月、中心にしたのは公式問題集のPart 3・4を何度も繰り返すシャドーイングと、苦手だった文法問題の対策。結果は615点から865点。リスニングのために腰を据えて何かをやったのは、このシャドーイングが初めてだった。
いまは塾で受験生に英語を教えてもいる。教え始めてまだ半年足らずだが、自分の受験とTOEICの経験を重ねて言えることがある。リスニングで点が取れないとき、足りていないのは単語でも文法でもないことが多い。
共通テストのリスニングが難しいのは「知ってる単語」が聞き取れないから
共通テストのリスニングを解いたあと、スクリプトを見て「え、これ知ってる単語じゃん」と思ったことはないだろうか。それは、あなたの語彙力の問題ではない。
英語には、単語同士がつながったり、弱く発音されたりして、つづりからは想像しにくい音になる現象がある。
- リエゾン(音の連結): "an apple" は「アン・アップル」ではなく「アナポー」に近い音になる
- 弱形: "have"や"of"のような機能語は、弱く・短く・あいまいに発音される。"should have told" は「シュダヴ・トウルド」のように聞こえ、単語単体の発音を待ち構えている耳では拾えない
- 脱落・同化: "next day" の "t" が消えて「ネクスデイ」に近い音になったり(脱落)、"meet you" が「ミーチュー」に近い音になったり(同化)する
これを知らないまま「単語量を増やせば聞き取れるようになる」と思って単語帳を何周もしても、リスニングの点数はなかなか伸びない。単語は知っているのに、耳が「その音の変化」に慣れていないだけだからだ。
それぞれの現象は、個別の記事で掘り下げている。連結は英語のリエゾンが聞き取れない、弱形は一覧表つきの英語の弱形が聞き取れない、脱落・同化・フラッピングは英語の音が消えて聞こえないへ。
どう練習すれば聞き取れるようになるか
やることは3つだけだ。
- スクリプトを見ながら、意味のかたまりごとに区切って読む(返り読みをやめる)
- 区切ったかたまりを、ゆっくり音読する(自分の口で、つながる音・消える音を実際に発音してみる)
- 同じ箇所を、スピードを上げながら繰り返す
偏差値39から音読を始めたばかりのころ、私は音源の真似をするだけで精いっぱいで、文の構造や和訳を意識する余裕はなかった。それでも続けるうちに口の動きに余裕が生まれ、今度は文構造に意識が向くようになり、英語を英語のまま読む感覚が少しずつついてきた。少なくとも私の場合は、口が先に音の変化を覚えると、耳もあとから追いついてきた。
音読でその音の変化を「自分の口が知っている状態」にしてから、リスニング音源を聞く。この順番にするだけでも、聞き取れる文は変わってくる。
よくある失敗
一番もったいない失敗は、「できるようになった気がして、やめてしまう」ことだ。私自身、高2で偏差値が39から62に上がったとき、英語が得意になったと勘違いして、高3の1年間はほとんど音読をしなくなった。共通テスト形式ではリーディング・リスニング合計で8〜8.5割は取れていたものの、そこから約1年、英語力はほぼ伸びなかった。浪人して音読を再開してからは、8.5〜9割で安定するようになった。
もう一つは、「シャドーイングをとにかく量やる」パターンだ。かたまり区切り(スラッシュ)を意識せずに聞き流すだけだと、どこでリエゾンや弱形が起きているか気づかないまま繰り返すことになる。量をこなしている割に伸びない、という状態に陥りやすい。
最後は、「聞き取れない箇所」を放置すること。1回聞いて分からなかった文をそのまま流してしまうと、次に同じパターンの音声変化が出てきても、また聞き取れない。聞き取れなかった箇所こそ、区切って・音読して・原因を確認する必要がある。
Script Flowでやっていること
このやり方をアプリにしたのがScript Flowだ。英文を貼るか写真で撮ると、AIが約60秒で意味のかたまり(スラッシュ)に区切った教材にしてくれる。区切りごとにゆっくり再生できるし、聞き取れなかった文に「聞き取り」マークをつけると、その文のどこにリエゾンや弱形があるかを、発音記号・口の形・カタカナ近似音つきでAIが解説してくれる。
私が遠回りして身につけたやり方を、最初からたどれるようにした形だ。共通テスト用のプリセット教材も入っているので、登録不要・無料で今すぐ試せる。
まずは、自分がどの音を聞き取れていないのかを確かめてみてほしい。