音読がいいらしい、という話はあちこちで聞く。それで英文を声に出してみたものの、これで合っているのかが分からない。意味は考えながら読むのか。何回読めばいいのか。ただ読み上げるだけで、本当に力がつくのか。
高2の秋、進研模試の英語偏差値が39だった僕も、同じ場所にいた。「音読なんて本当に意味があるのか」と疑いながら、『英語長文ハイパートレーニング 超基礎編』という長文問題集を、本に書かれた音読のやり方とYouTubeの解説を頼りに、1日1〜3時間読んだ。2カ月後の進研模試で、偏差値は62になった。その2カ月に何があったかは英語偏差値39から62に上がるまで——音読を疑っていた僕の2カ月に書いた。


この記事で書くのは物語ではなく、手順のほうだ。今日から、どの英文を、どの順番で、どう読むか。軸に置くのは、英文を意味のかたまりで区切って前から読む「スラッシュ音読」になる。
英語の音読は、やり方で結果が分かれる
始めたばかりのころの僕は、音源の真似をするだけで精いっぱいだった。文の構造や和訳を意識する余裕はほとんどなかった。それでも続けるうちに口の動きに余裕が生まれ、空いた分の意識が文構造に向くようになり、じわじわと英語を英語のまま読む感覚がついてきた。
あとから振り返ると、この順番には理屈がある。文字を音にする。単語の意味を思い出す。文の組み立てを追う。慣れないうちは、この一つひとつに頭を使い切ってしまい、肝心の意味を受け取る余白が残らない。同じ英文を繰り返し声に出すと、こうした処理が少しずつ体に移って、頭が意味のために空く。空いたぶんだけ、英文は前から順に、かたまりごとに入ってくるようになる。
裏を返せば、意味の入っていない英文をいくら読み上げても、鍛えられるのは口だけだ。目と口は動いているのに内容が頭に残らない——僕の言う「空読み」——を練習していることになる。音読は、意味を理解し終えた英文を、前から順に、口と頭が勝手に動くまで繰り返したときに機能する。声の良し悪しや滑舌は、ほとんど関係がない。
英語音読の正しいやり方——スラッシュ音読の7ステップ
- 教材は「半歩上」を選ぶ:今の自分のレベルをギリギリ超えるくらいの、音源つきの英文を1本選ぶ。知らない単語と取れない構文だらけの長文は、読む前の準備で力尽きる。偏差値39の僕には、超基礎レベルの長文問題集がそれだった。すでに解いた問題集や模試の長文でもいい
- 意味と構造を先に入れる:音読は、内容を理解した英文で始めるのが鉄則だ。英語がちんぷんかんぷんなら、1文ずつSVOC(主語・動詞・目的語・補語)と和訳を確認してから読む。ある程度読めるなら、長文を解いたあとに分からなかった構文だけ精読し、知らない単語を単語帳に抜き出せば準備は足りる。抜き出した単語の覚え方は英単語が覚えられないのは能力じゃない——僕は2000語1冊で通したに書いた
- 意味のかたまりでスラッシュを引く:"I love you" なら「私は/愛してる/あなたを」。文法的に厳密な区切りかどうかより、自分が一目で意味を取れる長さかどうかを優先する
- スラッシュ単位で、前から音読する:区切りごとに意味と情景を思い浮かべながら、左から右へ読み進める。文末まで行ってから戻らない。「私は/愛してる/あなたを」のぎこちない順番を、きれいな日本語に並べ直さないこと。英語の語順のまま意味を受け取る練習だからだ。長い文章は段落ごとに区切って仕上げる。一気に読み通すと、後半は口だけが動く作業になりやすい
- オーバーラッピングをする:英文を見ながら、音源と同時に声を出す。口が回らないうちは再生速度を落としていい。僕はTOEIC対策のとき、0.7〜0.8倍速の音読から始めて、慣れてから等倍に上げていた。つまずく箇所が減るまで繰り返す。僕の実感では、ここで速読力が伸びる
- シャドーイングに進む:スクリプトを見ずに、音源の少し後ろを影のように追いかけて読む。文字という頼りが消えるぶん負荷が高いので、オーバーラッピングがすらすらになってからでいい。僕の実感では、ここでリスニング力が伸びる。2つの練習の違いと使い分けはシャドーイングと音読の違い——TOEIC615→865の私の使い分けに書いた
- 間隔をあけて復習する:その日のうちにスラスラ言えるところまで持っていき、翌日に軽く読み直し、忘れかけたころにもう一度読む。2回目以降は「まだスラスラ言えるか」を確かめる程度で軽く。忘れかけたころに読んでスッと戻れば、その長文は卒業だ
何回読めばいいのか、が気になると思う。オーバーラッピングもシャドーイングも最低10回くらいが目安とよく言われるし、慣れないうちはもっとやっていい。ただ、僕自身は何回読んだか覚えていない。数えていなかったからだ。初心者のころから、「何回やったか」ではなく「スラスラ言えるようになったか」で次に進むかを決めていた。回数をノルマにすると、こなした瞬間に、棒読みのまま終わりにできてしまう。
もう一つ、全ステップの下に敷いておく意識がある。情景をイメージして、「このセリフは、いままさに自分が喋っているんだ」という気持ちで読む。僕はこれを「役者になる」と呼んでいる。日本語でも、小難しい言葉を頭で知っているだけの場合と、実際に使ってみて身についた場合では、定着するのは圧倒的に後者だ。同じことが英語にも言えると僕は考えている。目の前の英文を他人の文章として読み上げるのではなく、自分のセリフとして口に載せる。この意識があるかどうかで、同じ10回の中身が変わってくる。
音読のやり方でよくある失敗
一つ目は、解いた長文を全部音読しようとすることだ。真面目な人ほど、音読待ちの長文がどんどん溜まって回らなくなる。全部はやらなくていい。スラスラ読めて内容も分かった長文は、もう音読不要。カタカナ読みになった箇所など、部分的に引っかかった長文は、そこだけやり直す。腰を据えて音読するのは、まったく歯が立たなかった長文だ。長文は広く浅くより狭く深く。本数を減らしてでも、選んだ1本を口と頭が勝手に動くところまで仕上げるほうがいい、というのが僕のスタンスだ。
二つ目は、準備を飛ばして、とにかく回数を読むことだ。意味も構造も曖昧なまま読み上げる音読は、空読みの練習になる。読み終わった直後に「何の話だったか」を言えるかどうかで確かめられる。言えないなら、回数を増やす前に、手順2——意味と構造を先に入れる——へ戻るほうが先だ。
三つ目は、音読だけで成績が伸びると考えることだ。音読は、単語・文法・解釈(1文を正確に読む練習)に「加える」学習法であって、置き換えではない。僕の2カ月も、単語帳・文法書・解釈の参考書と並走させたうえでの音読だった。そして、伸びないときに「音読は意味がない」と切り捨てるのは早い。意味がないのではなく、やり方のどこかが間違っているのではないか、と先に疑う。かつて音読そのものを疑っていた僕が、いまはそう考えている。
Script Flowでのスラッシュ音読
この手順でいちばん重いのは、読む前の下ごしらえだ。精読して、スラッシュを引いて、単語を調べて、音源を用意する。ここで毎回力尽きるようだと、肝心の音読が続かない。
Script Flowは、その下ごしらえを肩代わりするために作ったアプリだ。英文を貼るか写真で撮ると、AIが約60秒で、意味のかたまりごとにスラッシュを引き、英日対訳と重要単語をつけた教材にする。スラッシュは区切りごとにゆっくり再生できるので、手順4の「スラッシュ単位の音読」がそのままなぞれる。再生速度は0.75〜1.5倍で変えられるから、口が回らないうちは落として、慣れたら等倍に戻すという進め方もできる。構文が取れない文に「文法」マークをつければ、AIがその文の構造を個別に解説してくれる。

共通テスト・英検2級・TOEIC・TOEFLのプリセット教材が入っていて、登録不要・無料で今日から試せる。教材の作成は無料だと毎月3回までだが、作った教材の音読と復習には制限がない。まずは1本、意味を入れて、区切って、前から読んでみてほしい。英文が前から順に入ってくる感覚は、僕の場合じわじわとしかつかなかったが、2カ月後には模試の数字になって表れた。