シャドーイングと音読は、何が違うのか。どちらも英語を声に出す練習で、見た目はよく似ている。「音読はやっているが、シャドーイングも必要なのか」「リスニングのためにはどちらをやればいいのか」——ここで手が止まっている人は多いと思う。
私は両方を、別の時期に、別の目的でやってきた。受験期は英文を見ながら読む音読が中心で、進研模試の英語偏差値は2カ月で39から62に上がり、長文を読む速さが大きく変わった。一方、TOEIC対策の2カ月はシャドーイングを中心にして、615点から865点になった。内訳を見ると、リスニングが315から430に伸びている。
結論から言えば、2つの違いは「文字を見ながら読むか、音だけを頼りに読むか」にある。そしてこの違いが、そのまま「どちらをいつ使うか」の答えになる。
シャドーイングと音読の違いは「文字を見るか、音に集中するか」
- 音読:英文(スクリプト)を見ながら、声に出して読む練習。英文を見ながら音源と同時に読むオーバーラッピングも、この記事では音読側に含める
- シャドーイング:スクリプトを見ずに、音源から少し遅れて、影のように追いかけて読む練習
手順としての差は「スクリプトを見るかどうか」の一点だ。ただ、この一点が練習の中身を大きく変える。
文字を見ながら読んでいる間は、目からの情報がつねに助けてくれる。だから、意味のかたまりを前から順に処理する練習に集中できて、英文を英語のまま読む回路ができていく。文末から戻って訳し直す「返り読み」も減っていく。私の実感では、これは速読力に効く。
一方、シャドーイングでは頼れるものが音しかない。すると、それまで文字に隠れていた「自分が聞き取れていない音」があぶり出される。聞こえたままの音をまねて口に出すうちに、頭の中で音と単語が結びつき、ネイティブの音の省略にも少しずつ耳が慣れていく。日本語でいえば、「あざっす」「おなしゃす」を「ありがとうございます」「お願いします」だと自然に聞き取れる感覚に近い。だから、私の実感ではシャドーイングはリスニング力に効く。
音読(オーバーラッピング)
英文を見ながら声に出す。目が助けてくれるので、前から順に処理する練習に集中できる
→ 速読力に効く
シャドーイング
スクリプトを見ずに、音源を少し遅れて追いかける。頼れるのは音だけなので、聞き取れていない音があぶり出される
→ リスニング力に効く
順番は「音読で口を慣らす → 仕上げにシャドーイング」
私の場合——音読で読解が、シャドーイングでリスニングが伸びた
この使い分けは、理屈より先に、自分の結果として表れた。
受験期の私は、英文を見ながらの音読が中心だった。高2の秋に偏差値39を取ってから、『ハイパートレーニング』という長文問題集を1日1〜3時間音読して、2カ月で62に。浪人した年も河合塾の長文テキストをコツコツ音読して、夏の全統記述模試では70.5になった。読む速さと正確さは、音読をやっていた期間にはっきり伸びた。このあたりの経緯は英語偏差値39から62に上がるまで——音読を疑っていた僕の2カ月に詳しく書いた。
ただしその間、リスニングは対策らしい対策をしていなかった。どちらかといえば、リーディングより点数が低く出る傾向がずっと残っていた。
転機はTOEICだ。大学院試験のために、3年近く英語から離れた状態から2カ月で仕上げる必要があった。単語を固め、苦手だった文法問題集を何周もしたうえで、公式問題集のPart 3・4をひたすらシャドーイングした。リスニングのために腰を据えて練習したのは、このときが初めてだった。結果は615点から865点。リスニングは315から430へ、115点分伸びた。
音読が中心だった時期には読解が、シャドーイングが中心だった時期にはリスニングが伸びた。だから「どちらが優れた練習か」という問いには、あまり意味がないと思っている。伸ばしたい力に合わせて使い分けるものだ。
どちらをいつ使うか——手順つきの使い分け
- 長文を速く正確に読めるようになりたい(受験の読解対策など)→ 音読・オーバーラッピングを軸にする
- リスニングを伸ばしたい(共通テストのリスニング・TOEICなど)→ シャドーイングまで進む
ただし、リスニング目的だからといって、いきなりシャドーイングから入るのはすすめない。文字なしで音を追いかけるのは負荷が高く、口が回らないまま挫折しやすいからだ。私がTOEICの公式問題集Part 3・4でやっていた手順は、次のとおりだ。
- 意味を理解した英文を用意する:一度解いて、内容と構造を確認した音源つきの英文を使う。意味の分からない文を口だけ動かしても、練習として残りにくい
- 文字を見ながら、ゆっくり音読する:はじめは口が回らないので、私は0.7〜0.8倍速に落として、スクリプトを見ながら音読していた
- 等倍速で、文字を見ながら読む:音源と同時に読むオーバーラッピング。この状態ですらすら言えるようになったら、その英文の1周目は終了
- 別の日に、シャドーイングへ移る:2周目はある程度口が動くので、何回か等倍速で文字を見ながら音読して口を慣らしてから、スクリプトを外して音源を追いかける
- 回数の目安:一般的には、オーバーラッピングもシャドーイングも最低10回くらいと言われる。慣れないうちはもっとやっていい。私自身は回数を数えるより「すらすら言えるようになったか」で先に進むかを判断していて、この流れで公式問題集1冊分を約10周した
机に向かえない時間も使える。私は倉庫バイトの最中もイヤホンをつけてぶつぶつ言っていたし、職場へ向かう道中にもやっていた。大きな声を出せる場所でなくても、口が動いていれば練習は続けられる。
よくある失敗
一つ目は、いきなりシャドーイングから始めてしまうことだ。文字を見ながらの音読で口を慣らす段階を飛ばすと、音源に置いていかれて口が止まり、「自分には無理だ」で終わりやすい。順番は、文字を見ながらの音読が先、シャドーイングが後だ。先にやる音読側の詳しい手順は、英語音読の正しいやり方——39→62の僕のスラッシュ音読7ステップにまとめた。
二つ目は、音読やシャドーイングだけで成績が伸びると考えることだ。これは単語・文法・解釈(1文を正確に読む練習)に「加える」学習法であって、置き換えではない。私自身、TOEICの2カ月もシャドーイングだけをやっていたわけではなく、単語を固め、苦手だった文法問題集を何周もしていた。
三つ目は、逆にリスニングを伸ばしたいのに、音読止まりでスクリプトを外さないことだ。文字を見ている限り、聞き取れていない音は文字に補われて表面化しない。また、そもそも英語は書いてある通りには発音されない。単語同士がつながったり、弱く短く読まれたりする音の変化を知らないと、シャドーイングで何をまねればいいのかも分からない。この音の変化については共通テストのリスニングが難しいのは、単語じゃなく「音」のせいだったで詳しく書いた。
Script Flowでの実践
この練習でいちばん面倒なのは、下ごしらえだ。意味を理解した状態で読み始めるのが鉄則なのに、和訳を確認して、単語を調べて、音源を用意して——と準備しているうちに力尽きる。Script Flowでは、英文を貼るか写真で撮ると、AIが約60秒で英日対訳と重要単語つきの教材にしてくれる。

音声は意味のかたまり(スラッシュ)ごとに区切って再生でき、再生速度も0.75〜1.5倍で変えられる。「口が回らないうちはゆっくり、慣れたら等倍」という今回の手順を、そのままなぞれる作りだ。聞き取れなかった文に「聞き取り」マークをつければ、どこでどんな音の変化が起きているかをAIが解説してくれるので、シャドーイングでまねるべき音も特定しやすくなる。
共通テスト・英検2級・TOEIC・TOEFLのプリセット教材が入っていて、登録不要・無料で今日から試せる。まずは音読で口を慣らして、すらすら言えるようになった英文で、スクリプトを外してみてほしい。文字に隠れていた自分の課題が、そこで初めて音として姿を現す。聞き取れる文が変わってくるのは、そこからだ。